囲碁と麻雀の地政学

囲碁と麻雀の地政学

"課題に即応するだけでなく、政策に積極的に取り組むためには、複雑なカテゴリーで考える必要がある。"

地政学において、チェスの用語を使うことはすでに一般的であり、それはズビグニュー・ブレジンスキーの著書『グランド・チェスボード:アメリカの優位とその地政学的重要性』の出版が一因です。この著作において、ブレジンスキーは、知的なゲームとして世界中で知られているチェスを、アメリカの覇権とその維持の必要性の文脈で解釈しました。しかしながら、多様な利害関係と矛盾が複雑に絡み合った多面的な世界に対して、本当にチェスのメタファーは適切なのでしょうか。ソビエト連邦が崩壊して二極体制が終わった後、1991年以降は事実上一極体制が確立しているのですから。

この問題に対する答えの一つは、アレクサンダー・ドゥーギンがワシントンでブレジンスキーに会った際の回想録に見ることができます。ドゥーギンがチェスは基本的に二つのプレイヤー、すなわち地政学の主要な要素である海洋勢力と陸上勢力が対決するゲームであると問いかけたところ、ブレジンスキーはそれについて考えたことはないと答えました。おそらく、彼はチェス盤上の対決を、大西洋主義がユーラシアのハートランドを支配することで、世界に対する最終的な支配を確立するための決定的な戦いと考えていたのでしょう。

*チェスというゲームはひとつの戦いの反映である。

確かに、チェスでは戦略的思考が不可欠ですが、それは最終的には二つの陣営が互いに競り合う一対一の戦いであると言えます。この状況は、チェスの原型であるチャトランガとは異なります。チャトランガでは、盤上には四人のプレイヤーが参加し、それぞれの駒が、軍隊の四つの部門を象徴し、一つの指揮官によって動かされます。

この一対一の形式への変貌は、西洋文化や形而上学に見られる二元論の象徴とも言えるでしょう。この観点から、カール・シュミットの「政治」における敵と味方の区別と、チェスの進化とを比較することは興味深いです。シュミットの理論では、中立な勢力については言及されていないことも注目に値し、これは西洋の政治思想にもうまく適合します。

確かに、チャトランガがそのルールや性質を変更したとしても、東洋にはその原形を維持した他の戦略ゲームが存在しています。それは囲碁と麻雀であり、これらのゲームも高度に知的なものであることに変わりはありません。特に囲碁は、2人で行うゲームでありながらも地政学的な要素が濃厚です。これは単なる一対一の戦いというよりも、多様な戦術が展開される戦争のような性格を持っています。その上で、囲碁は王や政治的指導者を取り囲んで捕らえるといった狙いではなく、領土を掌握することが主目的であり、そのルールは現代の政治的リアルを反映しているとも言えます。各地でさまざまな戦術と戦略を展開しなければならないため、プレイヤーにとっては高度な戦略的思考が求められます。

*中国の外交政策の成功は、囲碁の実践にその一端にあり、国際関係に適用できる多層的で、非線形な考え方を生み出していると思われる。

麻雀もまた、極めて興味深いゲームであり、政治的技巧に求められるような経験、記憶力、そして観察力が試されます。このゲームには、アダム・スミスが提唱したような「見えざる手」とも言える偶然性も組み込まれています。この偶然性は、ゲームのバリエーションやルールによって、時には些細な影響を与え、時にはゲームの行方を大きく左右します。4人中、最も価値のある牌の組み合わせを得たプレーヤーが勝者となるこのゲームは、中国の外交政策を思い起こさせる要素があります。中国が巧妙にレアアースの市場を支配し、欧米を多くの分野で凌駕する一方で、ロシアから適切な価格でエネルギーを確保し、ウィンウィンとされる戦略で他国と協調しているところ、さらに「一帯一路」イニシアティブを推進しているといった点が、まるで世界舞台で巧妙に麻雀を楽しむ中国が、最も価値のある「牌」を自分のものにしているかのようです。

ロシアもまた、多次元的かつ多方面的に効果的に活動する能力を磨く必要があります。そのユーラシア的特質ゆえに、地政学的な方向性は多様で複雑な構造を持つべきであり、これがさらなる発展の鍵となります。NWOは多くの点で力を試すのに適していますが、多極化した世界で真の主権極を構築するためには、今こそ緊急に幾つかの決定を行い、深刻な組織再編を進めるべきです。それに先立ち、そのような決定を外交政策の戦略に組み込み、具体的な実施手段を設計することが不可欠であると言えるでしょう。

 

翻訳:林田一博